独自にサブクローン化したマウス膵β細胞株細胞MIN6-m9はグルコース応答性インスリン分泌反応が良好であるが、MG-132またはEpoxomicinによりプロテアソーム活性を阻害するとグルコースによるインスリン分泌反応が選択的に抑制されることを見出した。一方、MIN6細胞の別のサブクローンであるMIN6-m14はグルコース応答性インスリン分泌反応が障害されている。ATP依存性タンパク分解速度を指標にすると、MIN6-m14のプロテアソーム活性はMIN6-m9と比較して有意に低下していた。プロテアソーム阻害活性を持たないプロテアーゼ阻害薬E-64dはMIN6-m9におけるインスリン分泌反応になんらの影響も及ぼさなかった。プロテアソーム阻害薬を作用させたとき、MIN6-m9細胞におけるグルコース代謝は変化せず、ATP産生量にも影響は無かった。グルコースによる細胞内カルシウム濃度の増加は、プロテアソーム阻害薬で著しく抑制された。高濃度KClによる脱分極刺激でのインスリン分泌も同様に低下した。これらの結果は、グルコース代謝と開口放出反応の接続が異常であることを示しており、この仕組みにおいて重要な役割を果たしているチャネル機能がユビキチン-プロテアソーム系の抑制によって障害されていることを強く示唆している。ATP感受性K^+チャネルと電位依存性カルシウムチャネルのユビキチン化と細胞内分布への影響について検討中である。正常マウス膵島においてもプロテアソームを阻害すると、MIN6-m9と同様の障害が生じることを確認した。
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