プロテアーゼによるタンパク分解系は様々な生体システムに作用しており、正常な生命活動を維持するために必須である。中でもATP依存性タンパク分解経路であるユビキチン-プロテアソーム系は、多くのタンパク質の機能発現や活性調節において重要な役割を有し、その破綻は種々の疾患を引き起こすことが知られている。独自にサブクローン化したマウス膵β細胞株細胞MIN6-m9はグルコース応答性インスリン分泌反応が良好であるが、MG-132またはEpoxomicinによりプロテアソーム活性を阻害するとグルコースによるインスリン分泌反応が選択的に抑制され、一方でMIN6-m14のプロテアソーム活性はMIN6-m9と比較して有意に低下していることを見出した。また、プロテアソーム活性を抑制してもグルコース代謝には影響がないことより、グルコース応答性インスリン分泌反応の抑制作用は、ATP産生以降、すなわちATP感受性カリウムチャネル以降の経路が障害されていることが明らかとなった。ユビキチン-プロテアソーム系は、種々のチャネル、トランスポーター、受容体の膜移行に影響を及ぼしていることから、まず、ATP感受性カリウムチャネルおよび電位依存性カルシウムチャネルに着目して解析を開始した。プロテアソーム活性を抑制したときの両チャネルタンパク質の細胞内局在の変化を明らかにする目的で、エピトープタグを付与したチャネルサブユニットタンパク質を作製し、通常条件下では細胞膜に集積することを確認した。今後、これを用いてプロテアソーム活性を抑制したときの局在変化を詳細に検討する。
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