研究概要 |
1.HSLの細胞周期、細胞内シグナリングに関する機能の解析 野生型および不活変異型HSLの安定化トランスフェクタントwt-HSL, HSL423, Mockを各2系列ずつ確立し,それらを用いて,経時的に細胞増殖率、脂質組成を検討した。wt-HSL発現細胞は細胞内トリグリセリド、コレステロールエステル、ジアシルグリセロール(DAG)が減少し、細胞増殖速度は低下していた。また、フォスフォリパーゼCによる膜リン脂質からのDAGの動員と、インスリン存在下でグルコースからDAGの生合成はwt-HSL発現細胞で30-50%に減少していることから、HSLは膜由来内因性DAGとグルコース由来de novo DAG両者の代謝を制御していることが判明した。さらに、DAGの標的である細胞膜PKCは、DAG結合部位を持つα, εアイソザイムがHSLの過剰発現により減少することを確認した。以上よりHSLがDAG/PKCの代謝を介して細胞増殖の制御に関与しているという仮説を支持する結果を得た。さらにこの実験系の可逆性を証明するため、テトラサイクリン(Tc)遺伝子制御システム(Tet-Off system)を導入したHSL発現細胞を作製している。正常(wt)HSL及び変異HSL(HSL423, HSL563)のcDNAをTet-Off-CHO細胞に導入し、安定化トランスフェクタントを確立するため、各クローンをスクリーニングしている。 2.脂肪的分解のメカニズム: HSLトランスロケーション HSL分子の脂肪滴へのトランスロケーション責任部位を同定するため,トランスフェクション効率が高く、内因性HSLを発現しない疑似脂肪細胞を、CHO細胞にリポタンパク受容体を過剰発現させることにより作製した。この細胞にGFPでラベルされたHSL遺伝子を導入し、脂肪滴への移行能を検討中である。
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