ヒト血中paraoxonase(PON1)は高比重リポ蛋白粒子上に存在し、動脈硬化の進展因子である低比重リポ蛋白の酸化を抑制することが知られている。一方、HMG-CoA還元酵素阻害剤(statin)にはコレステロール低下作用以外の抗動脈硬化作用(pleiotropic effect)を有することが注目されており、その1つとして抗酸化作用が推定されているが具体的な機序は明らかでない。そこで、statinのもつ抗酸化作用の一つがPON1を介したものであることを証明し、その機序を明らかにすることを目的として本研究を行った。 (1)statinのPON1転写活性への影響についての検討 PON1遺伝子上流プロモーター領域をルシフェラーゼ発現ベクターに組み込み、PON1-pGL3ベクターを作成。培養細胞にトランスフェクションした後、ルシフェラーゼアッセイにてstatin刺激下でPON1転写活性を測定した。 1.用量依存性;pitavastatin 0.5μM以上でPON1転写活性は、ほぼ用量依存的に亢進 2.時間依存性;24時間までは、時間とともにpitavastatin刺激によりPON1転写活性は亢進 3.培養細胞;HepG2細胞、HEK293細胞ともにpitavastatin刺激によりPON1転写活性は亢進 4.Statin ; pitavastatin、simvastatin、atrovastatin刺激によりPON1転写活性は亢進 以上の検討にて、statinがPON1転写活性を亢進させることを証明した。 (2)statinのPON1転写活性亢進機序についての検討 PON1-pGL3ベクターを培養細胞にトランスフェクションした後、メバロン酸カスケードの中間代謝産物であるメバロン酸(MV)、ファルネシルピロリン酸(FPP)、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)をpitavastatinと同時添加することによりstatinのPON1転写活性亢進作用に与える影響を検討した。 1.MV同時添加;statinの転写活性亢進作用が解除された 2.GGPP同時添加;statinの転写活性増亢進作用が解除されなかった 3.FPP同時添加;statinの転写活性亢進作用が解除された 以上の検討にて、HMG-CoA還元酵素阻害剤のPON1転写活性亢進作用は、MV、FPPを介した機序で起こっていることを証明した。
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