緒言 細胞内への糖の取り込みおよび放出は糖輸送担体(GLUT)と呼ばれる輸送系担体タンパクにより行われ、なかでも筋肉における糖輸送は主にGLUT4の細胞内プールから細胞表面へのトランスローケーションにより行われる。糖尿病においてはこのトランスロケーションの低下が指摘されている。トランスローケーションにはインスリンを介するものが指摘されていたが、近年インスリンを介さないトランスローケーションが報告されている。そこで、遺伝的2型糖尿病モデル動物を用いてトランスローケーションを検討した。 実験 実験はまず正常(ddY)および遺伝的2型糖尿病モデル動物(KK-Ayマウス)の血糖値およびインスリン値を測定し、KK-Ayマウスの高血糖および高インスリン血漿を確認した。次に、筋肉組織を各種遠心操作にて細胞内(LDL)画分と細胞表面(PM)画分に分け、SDS-PAGEで展開後、GLUT4タンパク抗体を用いたウエスタンブロッティング法によりGLUT4タンパク発現を検討した。 結果と考察 KK-Ayマウスは正常よりPM画分の低下が見られ、その値は正常マウスの20%近くまで低下した。このことは糖尿病状態ではLDL画分からPM画分へのGLUT4トランスローケーションが低下していると思われた。なお、LDM画分には差異は認められなかったが、このことは細胞内プールに多量のGLUT4タンパクが存在するためと考えられた。今回はインスリンを介するトランスローケーションについて低下していることと考えられたが、インスリンを介さない部分について検討する必要がある。
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