研究概要 |
本研究は、膵島移植時の細胞障害抑制による拒絶反応抵抗性膵島の誘導を目的としている。今回IFN-・等の炎症性サイトカイン誘導性酸化ストレスでの膵ベータ細胞障害に関して、そのメカニズムの解析及び抑制に関する研究を行った。移植膵島は,膵島周囲に浸潤する宿主側の炎症性細胞から産生されるIL-1・,IFN-・、TNF-・などの炎症性サイトカインの影響を受ける。今回膵ベータ細胞株を用いて,各種炎症性サイトカインによるベータ細胞障害について検討し、さらに抗アポトーシス効果をもつEGF(上皮増殖因子)の細胞障害抑制効果についても検討した。 【方法】 ラット膵ベータ細胞株RINm5Fおよびマウス膵ベータ細胞株BTCを用いin vitroにてリコンビナントヒトIL-1・、IFN-・,TNF-・を添加し,その細胞障害についてMTT法を用いて検討した。またこの系にリコンビナントヒトEGFを添加し,細胞障害抑制効果について検討した。 【結果】 RINm5Fの系では、IL-1・およびIFN-・の添加によって細胞障害が誘導され、特に48時間以降において顕著にみられた。この細胞障害はiNOSの阻害剤であるNG-Methyl-L-Arginineの添加によって阻害され、また培養上清中のNO(一酸化窒素)産生も細胞障害とともに上昇したことから、この細胞障害には炎症性サイトカインによるNO誘導が関与していることが示唆された。EGFの添加による細胞障害抑制は添加後24時間では認められたが、それ以降では効果は減弱した。移植後の膵島保護のためには、IFN-・等の炎症性サイトカイン、また誘導されるNOに対する対策が必要であると考えられ、現在IFN-・R発現抑制のための遺伝子導入に関する基礎的実験を進めている。
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