本研究は膵島移植における拒絶反応抵抗性膵島の開発を目的としている。 (1)本研究ではまず、IFN-gレセプター(IFN-gR)発現を抑制した膵β細胞遺伝子導入株による、炎症性サイトカイン刺激下での移植抗原(MHC抗原)発現抑制について検討した。IFN-gR発現を抑制した膵β細胞遺伝子導入株では、炎症性サイトカイン刺激下でのMHC分子発現増強はwild typeと比較して約30%減弱したもののMHC発現を完全に抑制するまでにはいたらないことが確認された。このことは移植時の膵島細胞障害には多種類のサイトカインが働いており、1種類のサイトカインの影響を排除するだけでは不十分であることを示唆している。 (2)そこで、炎症性サイトカインによる膵島細胞障害を軽減するための次の方策として、炎症性サイトカイン誘導性酸化ストレスの軽減について検討した。平成15年度までの本研究において、インスリン及び上皮増殖因子が活性酸素による膵島細胞障害を軽減することを明らかにした(業績参照)。しかし炎症性サイトカインにて誘導される細胞障害は、一酸化窒素(NO)産生を介し、48時間以降に遅発性に現れることから、今回効果が短時間であるインスリンやEGFに換えてラジカルスカベンジャーMCI-186(エダラボン)の膵島細胞保護効果について検討した。ラット膵島を用いin vitroにてIL-1bを添加し48時間培養、この系にMCI-186を加え同時にNO産生を測定した。IL-1b添加により膵島細胞障害が誘導され、MCI-186前処置にてこの細胞障害の軽減が得られた。この効果は過酸化水素添加による細胞障害においても同様に認められた。これらのことからラジカルスカベンジャー添加は活性酸素による影響のみならず炎症性サイトカインによる細胞障害も軽減することが確認され、移植前後の膵島保護に有用性が高いと考えられた。
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