研究概要 |
乳癌切除検体の癌部と非癌部から全ゲノムを抽出し、二次元電気泳動法を施行した。癌部と非癌部のスポット変化に着目し、特徴的な変化を示す十数個のスポットについてクローニングを行った。その結果、2つのスポットがGrowth factor receptor binding Protein 7(Grb7)遺伝子、ならびに5-hydroxytryptamine 6(5-HT6)遺伝子に一致した。二次元電気泳動法におけるスポット変化は、ゲノムの点突然変異、あるいはメチル化などを反映するものであり、遺伝子領域にそのような変化が起きた場合、遺伝子の発現、欠失に直接関与する可能性がある。このうち前者は文献的にも細胞内のtyrosine kinaseとの関与が知られており、上皮増殖因子に1つであるerbB2との関連も示唆されている。そこで、これらの遺伝子の発現について、乳癌細胞株MCF-7,MDA-MB231,MDA-MB435,T47D, BT20,SKBR3を対象に、RNAを抽出し、RT-PCR法で検討した。この結果、5-HT6については、すべての細胞株で発現を認めなかった。次に、Grb7については、MCF-7,MDA-MB231,MDA-MB435では発現を認めたものの、T47D, BT20, SKBR3では発現を認めなかった。つづいて、遺伝子発現の変化がメチル化によるものか、あるいは他の変異によるかを検討するため、細胞株に脱メチル化を誘導する薬剤である5-aza-2'-deoxycytidineによる処理を加え、同様にRNAを抽出、RT-PCR法により遺伝子変化を検討した。この結果、5-HT6,Grb7ともに遺伝子発現に薬剤処理による変化は認められず、5-HT6,あるいはGrb7の遺伝子発現の調節はメチル化ではなく、他の要因によるものと考えられた。
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