ヌードマウスにヒト肺癌細胞株A549を臀部皮下に接種し皮下腫瘍モデルを作成した。 PBS投与群(100μl)、Luciferase投与群(Ad-Lucウィルス粒子1x10^9個をPBS100μlに溶解した溶液)、mda-7投与群(Ad-mda-7を同様に)にわけそれぞれPBS、Ad-Luc、Ad-mda7を投与した。投与は腫瘍の最大直径が5mm以上になった時点より開始し、27Gの注射針を用いて腫瘍内への局所投与3日間で行った。 実験結果としては、18日間の観察でAd-mda7投与群において、他コントロール群と比較して有意差をもって腫瘍の増殖が抑制された。PBS投与群とLuc投与群に有意差は見られなかった。摘出腫瘍の免疫染色ではAd-mda-7投与群においてmda-7蛋白の発現を認めた。その他の群の腫瘍ではmda-7蛋白の発現は見られなかった。また、TUNEL染色ではTUNEL陽性細胞がmda-7投与群においてLuc投与群に比べて多かった。 これらのことよりmda-7遺伝子のアデノウィルスを用いた導入によりヒト肺癌細胞に対してアポトーシスを誘導することで抗腫瘍効果を呈したと考えた。 遺伝子導入の方法として本実験ではアデノウィルスを用いたが、その欠点として肺組織へのアデノウィルスの導入効率の悪さが挙げられる。そこで今後の課題としては遺伝子導入の方法の開発に期待がされる。カチオニックリポソームを用いた経静脈的全身投与による遺伝子導入法を利用して肺組織、特に肺腫瘍選択的に遺伝子の導入を行い、多発肺癌の治療を行うことが今後の目標である。
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