研究概要 |
家族性乳癌の原因遺伝子であるBRCA1はBARD1とともにRINGヘテロダイマーユビキチンリガーゼを形成する。この際、in vivoにおいてBRCA1とBARD1が安定化すると同時にいずれも自己ユビキチンかしていることがわかっていたが、われわれはBRCA1-BARD1によって生じるユビキチン鎖がLys-6を介したものである可能性が高いという結果を得た。Lys-6を介したユビキチン鎖はこれまでに報告がないことから、これがどのような機能を持つのかに興味が持たれる。最近のBRCA1、BARD1、およびユビキチン結合酵素(E2)の3量体の結晶解析の結果から、E2であるUbcH5cとUbcH7はBRCA1のE2結合部分に同等なAffinityで結合するにもかかわらず、BRCA1-BARD1-UbcH5c複合体は酵素活性を持ち、BRCA1-BARD1-UbcH7複合体は酵素活性を持たないことが判明した。これを利用してUbcH7を293T細胞にBRCA1-BARD1とともに共発現させたところ、UbcH7はBRCA1とBARD1の自己ユビキチン化に対してDominant Negative作用を有した。すなわち3量体形成があるのに自己ユビキチン化が起こっていない状態であるが、この際BRCA1とBARD1はそれぞれUbcH7を共発現させずに自己ユビキチン化しているものに比較して安定化していた。このことからLys-6を介したユビキチン鎖によるBRCA1,BARD1の自己ユビキチン化はタンパク質分解のシグナルであると予想される。現在、さらにこれらの確証を得るための実験とともに細胞内局在に関する実験を行っている。
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