これまでイヌ膵管を摘出、その組織片を熱可逆性ハイドロゲルポリマー(TGP : Thermoreversible gelation polymer)を用いた三次元培養を行い、膵前駆細胞が誘導できる培養系を確立してきた。しかしこの膵前駆細胞は培養開始4-5週目以後分裂・増殖を停止したままの状態で、かつ培養を継続しても分化しない。今回この膵前駆細胞と膵管組織由来の線維芽細胞との共培養を行い、膵ラ島様組織形成の有無を検討した。 ビーグル系雑犬の腹側膵を切除し、膵管に直径100μmのガイドワイヤーを挿入、膵管のみを摘出した。0.5mm角に細切、その組織片を10%TGP含有RPMI-1640液で培養した。またこの膵管組織片を、線維芽細胞を誘導する目的で0.03%コラーゲンゲル内培養した。培養後4週目に線維芽細胞のコラーゲンゲル上に膵前駆細胞をのせ共培養した。培養液にはKGF 10ng/ml、HGF 10ng/ml、nicotinamid 10mMを添加した。経日的に位相差顕微鏡で形態観察、6週目に組織学的検討を行った。 共培養後1週頃より膵前駆細胞は増殖し、3-4週頃より所々に大きさ50μm前後の細胞集塊が形成された。細胞集塊は1つの24穴プレートあたり平均20個観察され、丸く光る細胞質からなる30-50個の細胞で構成されていた。6週後のHE染色では、一部に大きさ10μm前後の管腔構造が付着した、核の大きな未分化な細胞集塊を認めた。しかし、インスリン・グルカゴン染色は陰性だった。 膵管組織片より誘導された膵前駆細胞は膵管由来線維芽細胞との共培養により形態学的にislet-like structureと酷似した細胞集塊が形成された。しかし膵内分泌機能は発現されていなかった。膵前駆細胞の膵内分泌細胞への分化誘導にはまださらなる因子が必要と考えられる。
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