研究概要 |
緩慢冷却による0℃以下での未凍結温度である過冷却保存を肝臓において確立させるために、過冷却保存の有用性をラット肝において検討した。 対象と方法:SD系Lewis雄性ラット(200-240g)を用いて、摘出保存肝の障害程度を従来の4℃保存と過冷却保存で比較検討する。保存時間はそれぞれ6,12,24,48時間とした。摘出肝はPetroftらの方法に順じて灌流後に摘出して、4℃のUW液に浸し4℃保存群と過冷却保存群を作成する。過冷却保存群はプログラム冷却装置内中で保存され、冷却装置内では保存肝が90分掛けて4℃から-0.5℃に至るようにプログラムした。検討項目として1.肝類洞径及び類洞壁細胞核の濃染をグリソンから中心静脈までをzone1〜3に分類し検討し、核濃染は光顕(200x)1視野当たりの個数をカウントした(各n=5)。2.保存肝のエネルギーチャージとして保存肝中のATP量をルシフェリンルシフェラーゼ法にて測定した(各n=5)。 結果:1.肝類洞径は組織障害の進行に伴い狭小化を認めるが、4℃保存群ではzone1において6時間後から狭小化を認め、時間の経過と共に狭小化が著明となった。また、zone2は12時間後、zone3は48時間後から狭小化を認めた。一方、-0.5℃保存群では12時間後までは類洞の狭小化は認められず、24時間後にzone1から狭小化を認めた。類洞壁細胞核の濃染個数は-0.5℃保存群の6時間後ではzone1,2,3それぞれで4℃保存群と比較し有意に低値を認めた。12時間後以降は両群間に有意な差は認められないが-0.5℃保存群で低値を示した。2.肝摘出時のATP量(x10-7mol/g.liver)は-0.5℃保存群では4℃保存群に比較してして有意に高値を示す傾向が認められた。 今後は、蛍光色素(Dichlorofluorescin及びPropidium Iodide)を用いた保存肝再灌流障害の検討と尿素サイクル酵素のzone別局在の検討に移る。
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