研究概要 |
今回新たに作成した画像解析ソフトにおける画像解析アルゴリズムは,組織検体を免疫染色後CCDカメラによりデジタル化し取り込んだJPEGファイル画像上の1ピクセルの色情報(RGB,24bit)より明度を計算して0〜1の連続変数として表現し,一定面積(6x6ピクセル)の明度の平均値をもって選択した領域の染色強度とするものである.画像取り込みの際の倍率を調節することにより,組織全体から個々の細胞,また細胞膜・細胞質・核と細胞内分画ごとに染色強度を評価することが可能である.さらに強拡大で取り込んだ画像を用いて目的とする個々の細胞の染色強度を算出しその平均値を求めれば,腫瘍細胞の解析の際には間質細胞を除外した染色強度も容易に求められる. 大腸癌培養細胞株をセルブロック法により固定包埋して免疫染色した結果を同ソフトを用いて解析し,細胞質中のβ-カテニン発現量を算出した.また同条件下で培養した大腸癌細胞株の細胞質中のβ-カテニンをWesternblot法により検出し,各細胞株における同蛋白の発現量を相対値として求めた.これらの値の相関を検討したところ高い相関が得られ(相関係数r=0.814,p<0.0001),組織の免疫染色の結果を定量的に評価する方法が確立された. そこでまず大腸癌細胞株でβ-カテニンとc-Mycの発現を免疫染色にて検討したところ,両者の発現には正の相関が認められた(r=0.437,p=0.0150).しかしヒト大腸癌切除検体を用いて腫瘍浸潤先進部で同様の検討を行ったところ有意な相関は認められず(r=0.265,p=0.0250),今後さらに他の諸因子について検討する予定である.
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