研究概要 |
従来、半定量的評価しかできなかった免疫組織染色において蛋白の発現量を定量的に評価するため今回新たな画像解析ソフトを作成した。大腸癌細胞株における蛋白発現量の検討ではWesternblot法と本ソフトによる免疫組織染色の解析結果との間に高い相関が認められ(r=0.814,p<0.0001)、免疫染色の結果を客観的・定量的に評価する方法が確立された。2000年〜2003年までに浜松医科大学医学部附属病院にで切除された進行大腸癌59症例において、インフォームドコンセントのもとに、腫瘍浸潤先進部でのβ-カテニンおよびその関連因子(c-Myc、uPAR、cdk4、CD44、COX-2)、β-catenin発現を修飾する因子(EGFR、c-erbB-2)など各種蛋白の発現を免疫租織学的に検討した結果、β-カテニンとcdk-4の間にr=0.422(p=0.0007)、β-カテニンとc-Mycとの間にr=0.265(p=0.0250)といずれも弱い相関が認められた。これら各因子の発現と臨床病理学的因子との間に有意な相関は認めらなかった。また今回検討した症例はいずれも最近の症例であり、生存予後との相関は今後の課題である。一方、大腸癌細胞株を用いた遺伝子変異の検討では、APC遺伝子の変異がよりC末端側に認められた細胞株ではβ-カテニンの細胞内蓄積がより顕著であったが(r=-0.842,p=0.0052)、同細胞株を実験動物の皮下に移植した場合は、in vivoとは異なるβ-カテニンの発現パターンを示すものもあり、β-カテニン分子の細胞内蓄積には細胞増殖因子など遺伝子変異以外の要因の関与が示唆された。
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