研究概要 |
[目的]癌の体質遺伝に関与すると考えられる遣伝子をすべて同時に解析することは困難であるため、これまでに明確な報告がない遺伝子に焦点をおく。本研究計画では、現在までに蓄積された多くの分子遺伝学情報を統合し、胃癌においての遺伝的発癌の高感受性を遺伝子レベルで解析することにより、新しい癌関連遺伝子を検出・解析することを目的とする。 [方法]平成14年度は既知の癌関連遺伝子群(p53,DCC, APC, CDKN2A等)、データベース上で遺伝性腫瘍との関連が示唆される染色体領域に位置するものの解析を試みた。同一患者の病変部と正常部を同時に解析するため候補として選択した遺伝子について、その領域をカバーするマイクロサテライトマーカーでスクリーニングを行った。 [結果]胃癌検体76例についてGeneScanを行ったところ、D17S1353(p53)/50.1%、D13S153(RB)/40.6%、APC-MS3/34.3%、DqS1748(p16)/31.7%、DMBT-MS3/37%、D10S1765(PTEN)/28.6%、DPC4-MS1/23.2%、D2S111/25%、D2S2330(SPAK)/33.8%、D4S419(SLIT2)/23.1%、D4S2946/31.4%、D5S1984/28,6%、D6S1598/19.4%、D6S1698/14.9%、6q21MSI/14.5%、D17S1147(MLX, E2F1)/32.5%という結果が得られた。以前の報告のように胃癌においてp53、RBやAPCのLOH頻度は高いものであったが、我々が候補遺伝子が存在していると仮定した染色体領域においては15-34%と低頻度であった。今回検索した大半の検体では多数の染色体上でlossが確認された。p53など既知の癌抑制遺伝子のLOHが見られずに候補遺伝子領域のLOHが確認された検体もあるため、癌化の結果の遺伝子異常とは判断できないものもある。今後は癌抑制遺伝子LOH(-)、候補遺伝子領域LOH(+)の検体に対して新規癌関連遺伝子の検索を試みたいと考えている。
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