研究概要 |
Indoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)はTryptophanを代謝し、Tリンパ球の増殖を阻害することにより妊娠や移植において免疫寛容を導くと考えられている。腫瘍免疫においても同様の現象が予想され、腫瘍が宿主免疫から回避する機構に関与していることが予想される。そこで、IDO inhibitorである1-methyl d,1-tryptophan(1MT)を用いてIDO阻害時の腫瘍免疫の変化をメラノーマ細胞(B16)の皮下注入によるマウス皮下腫瘍モデルを用いて検討した。まずIDO mRNAの発現をRT-PCR法にて確認した。B16においてIDO mRNAの発現は認められず、B16をマウス脾臓より採取したリンパ球と共培養した場合ならびに皮下腫瘍ではIDO mRNAの発現が認められた。さらにB16皮下腫瘍を作成したマウスの脾臓にてもIDO mRNAの発現を認めた。また、in vitroでIDO inhibitor(1MT)を培養液に溶解しNK活性を測定したところIDO inhibitorの濃度依存性にNK活性は低下した。皮下移植pelletを用いたB16皮下腫瘍モデルではIDO inhibitor pellet投与群のほうがplacebo pellet投与群(control)に比べ、腫瘍体積が有意に増加した。両群ともに肺、肝、腎、リンパ節への転移は認めなかった。また両群でのNK活性、CTL活性の測定では、NK活性はIDO inhibitor投与群においてplacebo投与群に比べ有意に低下していた。CTL活性はIDO inhibitor投与群のほうが高い傾向がみられた。以上の結果より、IDOの阻害によりNK活性は低下し腫瘍免疫は寛容へと導かれたと推測される。IDOが腫瘍に誘導されたのか樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞に誘導されたのかは今後の課題であるが、IDOには免疫寛容だけでなく腫瘍免疫における免疫細胞の機能調節因子としての作用も備えていると予想された。
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