研究概要 |
平成14年度のマウスを用いた検討より、indoleanime 2,3-dioxygenase(IDO)がNK細胞活性の調節因子として重要であり、抗腫瘍活性の維持に重要な役割を担っていることが推測された。本年度はヒト免疫細胞におけるIDOの発現およびIDO、IDOによるtryptophanの代謝産物であるkynurenine、IDO阻害剤である1-methyl d,l-tryptophan(1MT)存在下での免疫細胞の傷害活性の変化について検討した。ヒト末梢血単核球を付着細胞(樹状細胞、マクロファージなど)、非付着細胞(NK細胞、T細胞、B細胞など)に分けてIDOの発現を免疫染色にで検討し、また、negative isolation法を用いて非付着細胞よりNK細胞、T細胞、B細胞を分離し、各々のIDO mRNAの発現をRT-PCR法にて検討した。さらに、ヒトNK活性をIDO、kynurenine、1MTの濃度別に測定した。付着細胞、非付着細胞ともにIDO蛋白の発現が認められた。また、非付着細胞よりT細胞、NK細胞、B細胞のいずれにおいてもIDO mRNAの発現が認められ、IFN-γの添加により発現は増強された。IDOおよびkynurenineの濃度別のNK細胞活性の測定では、有意な相関は認められなかった。一方、1MTの濃度別のNK細胞活性は、1MTの濃度とNK細胞活性の間には負の相関が認められた。NK細胞やT細胞などのエフェクター細胞は樹状細胞やマクロファージ、腫瘍細胞から産生されるIDOにより細胞増殖が抑制されると報告されている。今回の研究では、エフェクター細胞自身がIODを産生し、その阻害によりNK細胞活性が低下したことより、IDOの添加によりNK細胞活性に影響がみられなかったことより、エフェクター細胞が産生するIDOはNK細胞活性に重要な役割を有していると考えられた。
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