膵癌細胞におけるIL-1αによるintegrin発現増強と、転移・浸潤能亢進についての検討 1)HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)との共培養状態における検討 血管新生に対して膵癌細胞自身が分泌するIL-1αがどう影響するかについて検討を行っている。現在までのところ、有意差を認めてはいないが、自らがIL-1αを分泌する膵癌細胞高肝転移株では、血管新生を亢進させる傾向を認めている。 転写因子・遺伝子の関与についての検討 1)AP-1の発現と活性変化についての検討 膵癌細胞Capan-2、PaCa-2ではAP-1活性が認められたが、BxPC-3、SW1990ではAP-1活性を認めなかった。また、膵細細胞をIL-1 receptor antagonistで刺激した場合、Capan-2、PaCa-2においてはAP-1の活性に低下を認めた。 2)アンチセンス遺伝子導入に関する検討 IL-1αのアンチセンス遺伝子をリポフェクチン法にてトランスフェクトすることにより、膵癌細胞の転移能が変化するかどうかについて検討した。マウス脾被膜下に注入した膵癌細胞の肝転移能は、有意に減弱した。 また、IL-1α.のアンチセンス遺伝子導入膵癌細胞のECM proteinに対する接着・浸潤能に変化を生ずるかどうかについて検討したところ、高肝転移株において、ECM proteinに対する接着・浸潤能は有意に減弱した。 以上の結果は、膵癌の肝転移機序において、IL-1αが転写因子を介したシグナル伝達経路が大きな役割を果たしていることを示しているものと考える。
|