本研究においては、対象ペプチドとしてHLAクラスI分子結合性癌拒絶抗原ペプチドSART3-109を用いた。抗体価の測定はペプチドを固相化したELISA法により行った。調べた癌患者において、幾人かの患者ではSART3-109ペプチドに対する抗体価が認められたが、調べた健常人ではSART3-109ペプチドに対する抗体活性は認められなかった。臨床試験においてSART3-109ペプチドワクチンを投与した患者においては、SART3-109特異的抗体価の上昇が認められた。 また、マウスにおいて非免疫BALB/cの血清を採取し、抗ペプチド抗体(抗SART3-109抗体)を測定したが、自然抗体が弱いながらも認められた。抗ペプチド抗体(免疫抗体)を得る目的で、BSAあるいはKLH結合ペプチドを準備し、BALB/cマウスに各週免疫し、x63細胞とのハイブリドーマを作製した。得られた目的ハイブリドーマの多くはSART3-109のみならず弱いながらも他のペプチドに対しても広く反応性を示した。ハイブリドーマ培養上清よりプロテインGを用いてIgG画分を精製した。精製IgG分画を培養細胞培地中に添加し増殖に及ぼす作用などを調べた結果、何ら影響が認められなかった。 抗ペプチド抗体活性の認められた数名の癌患者血清よりProteinGを用いてIgG画分を精製し、ペプチドを含むタンパク質に対する結合価をウエスタンブロッティング法により確認したが、タンパク質に対する特異的なバンドは認められなかったが、それ以外のいくつかのバンドが認められた。今後検出されたバンドの分子を特定することが、新たな知見を得る鍵となるであろう。
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