肺癌切除後再発死亡の原因の1つとして従来の診断法では検出できない微小転移の存在が考えられている。本研究は術前或いは術後の血液から効果的に微小転移を検出し、再発ハイリスク症例を選別する方法を確立することが目的である。癌に特異的な遺伝子変異検索の方法としてmutant-allele specific amplification法(MASA法)が開発されている。以前に我々は肺癌切除症例においてP53遺伝子変異を検索し、変異を有する症例のうちpathological N0症例を対象としてMASA法を用いてリンパ節微小転移の有無と予後との関係をretrospectiveに検討した。その結果MASA法で転移陰性の症例は全例生存しているのに対して、陽性の症例は高率に再発死亡しており、MASA法での微小転移検出は予後を推定するうえで非常に有用であることが明らかになった。肺癌組織および患者血清からのDNAの採取・保存および実験での使用にあたっては当院において遺伝子倫理申請を行い、それに基づきインフォームドコンセントを得ている。同意の得られた症例を対象にするために現在も腫瘍組織および手術前後の血清の採取と保存、そしてDNAの抽出をおこなっている。また、DNAのメチル化を特異的に検出するmethylation-specific PCR(MS-PCR)法も最近開発された。現在、p16遺伝子を用いたMS-PCR法で微小転移の検出が可能であるかを検討する目的でp16遺伝子のプロモーター領域でのprimerの設計とPCR条件の決定、検出感度に関する検討、および原発巣でのmethylationの有無を検索中である。
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