研究概要 |
肺癌の癌部および非癌部組織を採取し,テロメラーゼ活性とhTERT gene mRNA(hTERT)発現を測定.また肺癌の成り立ちを解明する目的で,肺腺癌の前癌病変とされている異型腺腫様過形成(AAH)2例を加え全64例を検討.62例の肺癌中,テロメラーゼ活性は47例(75.8%),hTERT発現は47例(75.8%)に認められ,いずれも陽性であった症例は39例(62.9%).しかし62例の非癌部組織には,テロメラーゼ活性及びhTERT発現は,いずれも見られなかった.テロメラーゼ活性陽性・hTERT陰性の症例は8例(12.9%),テロメラーゼ活性陰性・hTERT陽性の症例は8例(12.9%),いずれも陰性の症例は7例(11.3%).AAH2例を検討では,一つはテロメラーゼ活性陽性・hTERT発現陰性,もう一つはテロメラーゼ活性陰性・hTERT発現陽性の状況.hTERTのRT-PCR産物を半定的に解析すると,hTERT発現は,テロメラーゼの活性と相関することが判明(r=0.4,p<0.002).臨床的には,テロメラーゼ活性陽性例は,stageIは36例中24例,stageIIは10例中10例,stageIIIは16例中13例に見られ,hTERTは,stageIで36例中24例,stageIIで10例中8例,stageIIIで16例中15例に見られた.半定量的解析では,テロメラーゼの活性レベルは,stageIとII期の間に有意差を認めるのみ(stage I vs II;p<0.05),hTERT発現レベルに関しては,いずれの病期間にも有意差は認められなかった(p>0.05).T因子は,テロメラーゼ活性及びhTERT発現レベルの程度に,いずれも有意差を認めなかった(p>0.05).リンパ節転移(N因子)は,テロメラーゼ活性及びhTERT発現レベル程度に,いずれも有意差が見られた(NO vs N1+2,p<0.05).分化度は,テロメラーゼ活性において,高分化型(G1)と中・低分化型(G2+3)の間に有意差を認めたが(p<0.05),hTERTには有意差は見られなかった(p>0.05).その他,年齢,性別,組織型,T因子などとの関連もなかった(p>0.05).また,肺癌症例における術後5年生存(disease-free survival)をKaplan-Meier法により検討すると,hTERT陽性症例は陰性症例に比べ明らかに予後不良であった(p=0.0354).特に,注目すべき点として,hTERT陽性症例47例中12例に,再発および死亡例が認られるのに対し,hTERT陰性症例には再発は見られなかった.
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