現在の血管新生療法は、血管増殖因子を増多させる遺伝子治療と多分化能を有する幹細胞を用いて血管新生を促進させる細胞治療とに大別されると考えられる。 我々は自己骨格筋ポンプによる心機能補助により、不全心の心機能を再生させる研究を続けてきているが、骨格筋グラフトの虚血の問題がある。ここで、血管形成誘導因子の一つにVEGF(vascular endothelial growth factor)があるが、このVEGFR-1は血管新生の制御に関与し虚血下で誘導される。血管新生を増勢させるために、血管増殖因子の導入が虚血部分における血管新生を促進させることが期待される。また細胞療法における幹細胞としては自己の骨格筋芽細胞(骨格筋系の幹細胞)と自己骨髄幹細胞を用いる。 虚血骨格筋モデルにおいて遺伝子導入と細胞導入との融合による血管新生の増大効果を実験的に立証する事が本実験の目的である。 まず、骨格筋芽細胞と自己骨髄細胞に遺伝子を導入する方法論の検討から行った。まず、marker遺伝子はβ-Galをエレクロトポレーション法により、培養細胞中に遺伝子を導入し、その導入効果を検討したところ、良好な結果を得た。現在、Adenovirusベクターによる遺伝子導入の検討を開始している。 また、遊離骨格筋グラフトの虚血部において血管新生を促進させ骨格筋グラフトの収縮能と持久力の向上に対する検討を行っているが、骨格筋は広背筋を用いペースメーカーを植え込みburst刺激のpreconditioningを行っておく必要がある。SONO micrometryクリスタルの植え込みによる筋収縮能の局所効果を計測しているが、まだ安定した結果が得られていないため、次年度の検討項目とした。 また、収縮能に加え、colored microsphereを用いた血流改善効果の検討を行っていく予定である。
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