研究概要 |
抗癌剤として使われているシスプラチン(cis-ciamminedichloroplatinium(II), CDDP)は副作用として重篤な腎障害を引き起こす。この原因としてCDDPによって産生される活性酸素種(reactive oxygen species, ROS)が細胞障害を引き起こすと考えられている。一方、脳の松果体から分泌される生理活性アミン誘導体のメラトニン(N-acetyl-5-methoxytryptamine, MLT)は、生体リズムに関与しているとともに、抗酸化作用をもつといわれている。本研究は、in vitro(試験管内)でMLTがCDDPより産生されるROSに消去作用を示すか否かを明らかにするために実験を行なった。またMLTは体内で6-ヒドロキシメラトニン(6-hydroxymelatonin,6-OH-MLT)に代謝されることが知られているので、MLTと同様に6-OH-MLTによる活性酸素消去作用についても検討した。活性酸素産生量は電子スピン共鳴(electron spin resonance, ESR)で5,5-dimethy-1-pyrroline N-oxide(DMPO)を用いたスピントラップ法にて測定した。実験はCDDPによるROS産生能は各種濃度(0.34mM,0.67mM,1.33mM)のCDDPをリン酸緩衝溶液pH(7.4,7.6,8.0)に加えた後に産生される活性酸素量を測定した。各種濃度のMLT(1.8μM,18μM,180μM)と6-OH-MLT(1.8μM,18μM,180μM)を加えて行った。CDDPによるROS産生は、ESRスペクトルより.OHが産生されていることが明らかとなった。MLT及び6-OH-MLTで1.33mM CDDPより産生された.OHに対して消去作用を検討した結果、MLTにより約90%以上が消去されることが明らかになった。 以上の結果より、CDDPによって産生された.OHに対し、6-OH-MLTよりもMLTに消去作用があることが判明した。
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