1.前実験 悪性神経膠腫摘出標本を-80度で保存後、それらよりタンパク質を抽出した。 得られたタンパク質を定量し、各検体20マイクログラムを用いてSDS-PAGEを行った後、メンブランにトランスファーした。得られたメンブランを用い、ウエスタンブロットを行った。 まずコントロールとして、Actinを用い、各症例のタンパク質量が同一であることを確認した。 次に、AKT1、phospho-specific AKT(活性化AKT)の抗体を用い実験をおこない、各症例においてAKTの発現量はほぼ差がなかったが、活性化AKTは悪性神経膠腫のほぼ全例において、発現が上昇していることを確認した。このことから、神経膠腫の悪性化にAKTの活性化が強く関与している可能性が示唆された。次にAKYの下流の因子p27の抗体を用い実験をおこなった。理論的にはp27の発現はAKTの発現により低下すると予想される。しかしながら悪性神経膠腫におけるp27の発現は一定ではなく、p27タンパク質の発現にはAKT以外のさまざまな因子が作用し手いる可能性が示唆された。 2.低酸素状態でのPTEN-AKT経路を介したsurvival pathwayの働き 正常AKT発現細胞、またはAKT高発現細胞でも、Normoxiaの状態ではPTENの発現は軽度であったが、低酸素負荷をかけると発現が上昇する傾向が認められた。また正常AKT発現細胞においては、低酸素負荷をかけても、AKTの活性化は認められず、内因性PTENの発現の上昇が関与していると考えられた。現在、増殖因子付加後の活性化AKTの変化、またその、negative feedbackとしての、PTENの誘導、さらにそれに関係する因子の同定を行っていく予定である。
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