目的:Geldanamycin (GA)は、benzoquinone ansamycinの一種の抗生物質であり、種々の腫瘍の増殖を抑制する。我々はグリオーマ細胞の増殖および遊走に対するGAの影響についてin vitroで検討を行った。 方法:マウスグリオーマGL261に対し、GAを種々の濃度と時間で作用させ、増殖、生存率および遊走距離を検討した。細胞の遊走には、細胞に回転を加え培養することにより作成した細胞集塊を用い、集塊から遊走した細胞の距離を測定し比較した。同時にDNAを抽出し細胞周期の解析を行い、細胞の増殖や遊走に関与するとされるfocal adhesion kinase (FAK)の発現とリン酸化も検討した。 結果:1.cytotoxicity;24-72時間の作用では、GAは10nMで細胞の増殖を抑制し、50nMで殺細胞効果を示した。2.cytostasis;1-4時間の作用では、GAは50nMで細胞の増殖を抑制したが、生存率には影響をおよぼさなかった。3.25nMのGAは14時間で細胞にG2/M arrestを誘導した。4.5nMのGAは、細胞の遊走を抑制した。5.上記のGAの濃度は、FAKの発現とリン酸化を抑制する濃度く100nM)よりいずれも低濃度であった。 結論:GAは、in vitroでマウスグリオーマに対して、増殖および遊走抑制効果を示し、GAはグリオーマの治療に有効である可能性が示唆された。今後、in vivoでの検討が必要である。
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