研究概要 |
【目的】我々は近年,gliomaの浸潤に関与する細胞外マトリックス分解酵素MT1-MMP (membrane type 1-matrix metalloproteinase)に対する抑制分子を脳細胞外マトリックスTestican family(TF)内に見出した(Cancer Res 61:8896-902,2001)。本研究ではTF間の相互作用およびヒトglioma組織におけるTFの発現および局在を検討した。【方法】MT1-MMP, MMP-2とともにTFの発現ベクターおよびdeletion mutantを293T細胞に遺伝子導入し,Zymographyと免疫沈降を行った。またWound assayによりglioma細胞株に対する浸潤抑制効果を検討した。Glioma 51例につき,ABI PRISM 7700を用いmRNA発現量を計測した。またin situ hybridizationを行った。【結果】MT1-MMP阻害効果を有しないT-2は同効果を有するT-1,T-3,N-Tesと結合することによりその働きを阻害することが分かった。その結合サイトはT-1,T-3,N-Tesのextracellular calcium binding (EC) domainとT-2のunique domainであった。N-TesのEC domainを欠失した変異体(Δ122)はMT1-MMPを抑制し,かつT-2との結合を逃れた。Wound assayの結果もこれと矛盾しない所見であった。またTFの発現量はいずれもglioblastomaで有意に低く,その局在はneuronで強く,腫瘍細胞では弱かった。発現量はTFのうちT-2で最も高かった。【結論】脳組織内に比較的多量に存在するT-2はT-1,T-3,N-TesのMT1-MMP阻害能を解除することによって浸潤を促進させる。Δ122は抗浸潤治療の候補分子になり得ることが示唆された。
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