C57BL6マウス由来のGL261マウスグリオーマ細胞株を、定位脳的にマウス右大脳半球へ移植する技術を確立し脳腫瘍モデルを作成した。昨年度の研究で確立したマウス骨髄からの樹状細胞の誘導法に基づき、未熟樹状細胞を誘導し、これにGL261細胞を破砕したライセートを抗原としてパルスした後マウスの頚部皮膚に接種する樹状細胞ワクチン法を確立した。今回の研究では樹状細胞ワクチンと正電荷リポソーム包埋インターフェロンβ遺伝子治療との併用による抗腫瘍効果を確認するため、脳腫瘍モデルを、1)コントロール未治療群、2)インターフェロンβ遺伝子治療のみ、3)樹状細胞ワクチンのみ、4)樹状細胞ワクチン+インターフェロンβ遺伝子治療併用療法の4群に分類した。正電荷リポソーム包埋インターフェロンβ遺伝子は定位脳的に脳腫瘍内に投与された。治療効果判定としては生存期間、治療後の腫瘍体積を解析し、また抗腫瘍免疫の誘導を確認するために腫瘍内に浸潤したリンパ球の免疫組織染色を実施した。 その結果併用治療群は他の3群と比較し統計学的に有意な生存の延長を認め、腫瘍体積も著明な腫瘍の増殖抑制効果を示した。免疫組織染色の結果は、併用治療群ではCD8+のリンパ球が他の治療群と比べ著明に浸潤していることが確認された。この研究から樹状細胞ワクチンの併用によりインターフェロンβ遺伝子を用いた免疫遺伝子治療はより強力な治療法になると考えられた。今後はこれらの併用療法による強力な抗腫瘍免疫の誘導効果について、腫瘍内にインターフェロンβ遺伝子を導入することによるサイトカインやケモカインなどの微小環境の変化や免疫学的特権部位と呼ばれる中枢神経系へのリンパ球のtrafficking等、抗腫瘍メカニズムについて検討してゆく予定である。
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