平成14年度の実験はほぼ計画通り進展した。4月から8月までの5ヶ月間でヒト末梢血由来血管内皮前駆細胞を分離、培養することに成功し、Dil-acetyl-LDLの細胞内への取り込みや内皮特異抗原に対する抗体を用いた免疫組織学的検討により内皮前駆細胞であることを確認した。しかし本細胞は培養条件により収量が安定せず、大量調節のため大量のヒト末梢血を必要とすることが欠点であった。そのため9月よりラット骨髄を用いた骨髄由来内皮前駆細胞の培養に変更した。末梢血内皮前駆細胞の由来は骨髄であることが既に判明していることから、骨髄由来内皮前駆細胞を用いることは本質的に末梢血由来血管内皮前駆細胞を用いることとかわりなく、かつ同種移植実験に有利と判断された。培養方法もラット大腿骨より骨髄細胞を採取した後は末梢血由来血管内皮前駆細胞の分離培養と全く同様で、しかも内皮前駆細胞の大量培養が安定して可能となった。これらの細胞においてもDil-acetyl-LDLの細胞内取り込みを確認し内皮特異抗原に対する抗体を用いた免疫組織学的検討、ウェスターンブロットを行い内皮前駆細胞であることを確認した。 ついでラット脳梗塞モデルを作成した。計画通りthread modelを用いて脳梗塞を作成することに成功した。さらにこのモデルを用いて、あらかじめDil-acetyl LDLを取り込ませ蛍光標識した内皮前駆細胞を血管内投与した。現時点では内皮前駆細胞が脳梗塞の範囲を縮小する効果までは確認されていないが、内皮前駆細胞が脳梗塞巣に集積することは蛍光顕微鏡を用いて確認した。
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