我々は脳虚血障害に対する低体温療法の効果について動物モデルを用いて基礎的研究を行ってきた。 今回の研究ではまず、低体温の安全性および脳保護効果を検討するために成描の一過性脳虚血モデル(一側中大脳動脈閉塞、再潅流モデル)を用いて、全身麻酔調節呼吸下に脳温が30℃になるよう全身を冷却する方法を用いた。そして虚血前にこの冷却をおこない、脳温が定常状態に到達した時点で脳虚血および再潅流を施行し、実験終了後に虚血に対する脳保護効果を比重法によって脳浮腫の程度を検討することにより評価した。さらに虚血、再潅流の期間を通して経時的に電気生理学的な手法、すなわち感覚誘発電位を用いて保護作用について検討しており、双方の結果、低体温による脳保護作用を明らかにした。現在これらの結果を国際学会等での発表する予定である。またこの実験に加え、低体温状態からの復温の条件、すなわち緩徐な復温と急速な復温とを比較した場合に低体温の脳保護作用に対してどのような影響が及ぶのかについても検討中である。 上記の実験と平行して行っている実験としては、Sprague-Dawleyラットの両側総頚動脈および一側中大脳動脈閉塞-再潅流モデルを用いて行っている。これまでの低体温の虚血耐性の誘導の条件について検討するために、まずはどの程度の低温状態が必要なのかを34℃から28℃までの範囲で検討中であり、またその長さも短い時間(10分)長時間(120分)の範囲で変化させて検討している。
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