Bad蛋白は、アポトーシス抑制蛋白であるBcl-xLと細胞内でinteractionすることによりアポトーシスを誘導し、リン酸化によって不活化されることが知られている。今回、マウスBad遺伝子をテンプレートに、2箇所のリン酸化部位、つまり、コドン112および136のセリンをアラニンに置換するようにPCR法を用いたmutagenesisを行い、変異Badを作成した。この変異Bad遺伝子と、ジフテリアトキシンのトランスポートドメイン(DTTR)とのgenetic fusionを行い、大腸菌を用いた蛋白発現系にて融合蛋白Bad-DTTRを精製した。この精製融合蛋白Bad-DTTRをグリオーマ細胞の培養液中に加えると、濃度依存性に殺細胞効果およびアポトーシス誘導能を観察することができた。そのIC50は変異Bad-DTTR蛋白で、5×10^<-8>Mであった。Bad蛋白のみでは殺細胞効果を示さないこと、またこの融合蛋白は細胞内のBcl-xLの分布を変化させたことから、この融合蛋白が細胞内に取り込まれ、Bcl-xLとのinteractionにより、アポトーシスを誘導していることが考えられた。また、長期的な細胞増殖抑制効果を見るために、clonogenic assayを行い、この変異Bad-DTTR蛋白は自然体Bad-DTTR蛋白に比較して強い増殖抑制効果を示した。さらにコドン155を含む3箇所のリン酸化部位を変異させたBad-DTTRは、2箇所の変異のものと殺細胞効果に違いは見られず、コドン112および136のリン酸化部位が不活化には重要であると考えられた。
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