研究概要 |
平成14年度は、(1)b-FGF, BDNF遺伝子の細胞への導入、(2)ラット脊髄慢性圧迫モデル(sublaminal progressive compression model)の作成を行った。 (1)b-FGF,BDNF遺伝子のプラスミドよりそれぞれのcDNAを切り出し、コスミドを作製しこれらをアデノウイルスベクターNRK細胞(ラット正常腎臓由来)へ導入する。遺伝子導入操作を終えた細胞をG-418(neomycin analogue)存在下で培養し、生き残った細胞をクローンニングし、現在、b-FGF,BDNF遺伝子が導入されていることを確認している。方法としてはSouthern blot法にてb-FGF,BDNF遺伝子が導入されているか確認している。さらに、これらの細胞株についてNorthern blot法を用いてmRNAが導入されているかを確認する。これにより、導入が確認できたクローンでBDNF mRNAの発現を確認する。これらで得られた細胞株に対してWestern blottingを行い、細胞内でBDNF蛋白が産生されているかの確認を行う。さらに、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)を行い、細胞の蛋白産生を確認する。以上によりh-FGF,BDNF産生細胞株を樹立する。 (2)Wister ratを用い、全身麻酔下にて、第5、第6頚椎椎弓下にcompression meterialを挿入し慢性圧迫モデルを作成した。術後、自発的運動量と、強制運動量を回転式運動量測定ケージおよびトレッドミル、傾斜姿勢維持測定板にてそれぞれ計測した。術後、24週になると運動機能の低下が見られ始める。この時期には、脊髄前角細胞も減少してくるのだが、ここで全身麻酔下にて、BDNF産生細胞とb-FGF産生細胞をそれぞれ1×10^6.cellsずつ脊髄圧迫部位に移植した。また、BDNF産生細胞およびh-FGF産生細胞の単独移植群も作製する。その後、細胞移植をしていないcontrol群とBDNF産生細胞+b-FGF産生細胞同時移植群、BDNF産生細胞群単独移植群、b-FGF産生細胞単独移植群それぞれについて、自発的運動量、強制運動量を測定する。 以上のように、現在安定した細胞株樹立を目指しているところである。また、脊髄慢性圧迫モデルについてコントロールとしてh-FGF,BDNFの発現を蛍光抗体法を用いて検討している。
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