機能的電気刺激を用いた機能再建について、平成14年度は、電極(4チャンネル)を購入し、脊髄後索電気刺激の臨床応用をめざしている。現在は、遷延性意識障害がおもな対象であるが、いわゆる植物状態のみでなく、minimum cognition stateに対しても、その適応を拡大していっている。症例も5例となり、意識障害の改善度は、慢性期意識障害のスコアリング(意識障害治療学会)においても、明らかに有効であるといえる。さらに科学的証明のため、来年度は、3DSRT(three-dimensional stereotaxic ROI template)を利用して、治療効果の確認、脳血流量の解析、脊髄電気刺激の手術適応の決定をすすめていく予定である。 次に、横隔神経を電気刺激して横隔膜運動を再建する、呼吸ペースメーカーについて、症例はまだ1例であるが、現在、8ヶ月以上連続使用中であり、筋疲労の問題もなく呼吸運動を再建している。これは、呼吸ペースメーカー導入時より、筋疲労の対策に十分取り組み、訓練ができた成果と考えている。 最後に、機能的電気刺激を用いた上肢麻痺の再建であるが、まだ、臨床例は国内では経験していない。ただし、完全植え込み型装置についての習熟、手術手技に対する研究は、今後も継続する予定である。再生医療の進歩にはめざましいものがあるが、直ちに臨床応用できるものではない。機能的電気刺激の臨床医学に対する有効性を、今後、証明できるように臨床を中心に研究をすすめていきたい。
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