機能的電気刺激を用いた機能再建について、平成15年度は、persistent vegetative stateおよびminimum cognition stateに対して脊髄後索電気刺激を行った。本年度の症例数は21例であった。また、SPECTにおいて3DSRT(three-dimensional stereotaxic ROI template)を導入して、より正確な局所脳血流量を定量が可能となり、術前診断の指標として有用性を見いだせそうである。これらは第12回日本意識障害学会にて報告した。 次に、横隔神経を電気刺激して呼吸運動を再建する、呼吸ペースメーカーについてであるが、症例は連続使用期間をさらに延長し、まもなく2年間になろうとしている。筋疲労の問題もなく、自宅療養が可能となった。レスピレーターから離脱できることによる、QOLの改善は明らかである。今後、電気刺激における、thresholdの研究、筋疲労の回避、呼吸運動再建など、研究テーマとして発展させたい。これらは、2003年のActa Neurochirurgicaに投稿し掲載された。 最後に、機能的電気刺激を用いた上肢再建であるが、臨床例は国内では経験していない。ただし、筋萎縮や痙性、筋疲労の改善、軽減のため、表面筋刺激装置を購入し、臨床に使用している。まだ、データとしてはまとめられていないが、機能的電気刺激導入の術前トレーニングとして有用である。われわれが導入を希望している完全植え込み型装置freeHand systemは、米国FDAからは承認されているが、わが国では未承認である。これらの臨床応用が可能となるように、手術手技に対する研究、上肢再建訓練プログラムに対する研究は、今後も継続する予定である。そして、機能的電気刺激の有効性を、臨床医学において証明できるよう研鑽を積みたい。
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