研究概要 |
平成14年度は変形性関節症(OA)モデル動物の関節滑膜に対する関節局所のデコイ型核酸医薬導入による関節破壊抑制を分子生物学的、免疫組織学的に検討した。 Fisherラットの膝前十字靭帯を切除し作成したOAモデル(ACLTラット)における関節症の自然経過を組織学的に観察し、同時にIL-lb, TNFaの発現をRT-PCRとELISA法を用いて確認したところ、靱帯切除後6週から9週で関節軟骨内のプロテオグリカン(PG)の減少と軟骨表層のfibrillationが見られるとともにIL-lb, TNFaの発現がともに亢進していた。NFκBはIL-lb, TNFaを始めとする炎症性サイトカインの産生を制御する転写因子であるのでNFκBデコイを投与することによりこれらの炎症性サイトカインの産生が抑制され、OAの進行が抑制されることが予想された。 まずNFκBデコイは20塩基対の合成核酸であるが、これがベクターを用いずに細胞内の核に取り込まれる効率を評価した。FITC標識したNFκBデコイを健常ラットの膝関節に注射したところ関節内滑膜組織の表層細胞を中心に核内に蛍光が確認された。 次にACLTラットの両膝に対してNFκBデコイ、スクランブル・デコイ(NFκBと結合しない合成核酸)、ヒアルロン酸(HA)、PBSを各々週1回、6回連続で関節内注射し組織学的評価したところNFκBデコイ群で他群と比較して有意にPG減少が抑制されており、OAの進行が抑制されていると判断した。また関節内滑膜と関節軟骨を回収しIL-lb, TNFaの発現レベルをRT-PCRとELISA法を用いて確認したところNFκBデコイ群でこれらの炎症性サイトカインの産生が低下していた。
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