人工関節周囲の骨溶解(periprosthetic osteolysis)は一旦発生するとその多くは進行性であり、現在のところ観血的治療以外にはその治療・予防法はない。一方ビスフォスフォネートは骨粗鬆症の治療薬であり、強い破骨細胞抑制効果を有する。今回periprosthetic osteolysisの実験モデルを使用してビスフォスフォネートの炎症および骨吸収抑制作用について検討した。 方法 ビスフォスフォネート:アミノビスフオスフォネート(incadronate)を使用した。 1.In vitro study:ヒト末梢血由来の単球およびマウスマクロファージ様細胞J774にチタン合金粒子(平均粒径5μm以下)を暴露し、一部にはincadonmateを種々の濃度で加え、上清中のTNF-αをELISA法にて測定した。2.In vivo study:8週齢の雄マウス(C3H-HeN)を使用した。麻酔下に頭蓋冠に小孔を作成し、その部位に径5μm以下の超高分子量ポリエチレン粒子を埋入した。10日後に頭蓋冠を摘出し、組織標本とした。小孔を横断する切片において小孔より骨内に侵入した肉芽組織の面積をNIH imageにて定量化し、骨吸収の指標とした。また骨表面に存在するTRAP陽性の多核細胞の数をカウントした。結果 1.チタン合金粒子によっていずれの細胞種も量依存性にTNF-αを産生した。Incadronate投与によってTNF-αの産生は有意に抑制された。 2.ポリエチレン粒子の埋入部には粒子を貧食したマクロファージと巨細胞からなる異物肉芽腫が形成され、それらは骨組織内に侵食していた。その骨吸収面積およびTRAP陽性細胞数は対照群よりも有意に高かった。ポリエチレン粒子による骨吸収はincadronate投与によって約30%抑制された。しかし破骨細胞の数に有意な変化はなかった。 考察および結論 incadronateによるマクロファージの不活化と骨吸収抑制効果はビスフォスフォネートによるperiprosthetic osteolysisの予防または治療の可能性を示唆するものである。
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