研究概要 |
方法:S-D系雌ラット34匹を用い、深麻酔下に第5腰神経根または坐骨神経を展開した。0.4%デキサメサゾン0.1mLと生理食塩水(対照)0.1mLを後根神経節または坐骨神経に直接局所投与し、以下の項目について検討した。1.神経内血流:レーザー・ドップラー血流計を用いて、薬剤投与前後の後根神経節または坐骨神経の血流計測を5分毎に30分間行った。2.組織学的検討:デキサメサゾン局所投与後2,4および6日目に薬剤投与部位の坐骨神経を摘出し、組織標本を作製して神経細胞、軸索の形態および炎症性変化の有無を検討した。 結果: 1.神経内血流:デキサメサゾン投与後20〜30分で後根神経節と坐骨神経の血流は投与前と比較して有意に減少していた(p<0.05)。デキサメサゾン投与後30分の後根神経節と坐骨神経の血流は、それぞれ投与前の85.6%、72.3%に減少していた。生理食塩水投与前後では、後根神経節と坐骨神経の血流に有意差は認められなかった。 2.組織学的検討:デキサメサゾン投与後2日目の坐骨神経に浮腫やSchwann cell activationが認められた。脱髄や変性は認められなかった。 考察:正常な後根神経節と坐骨神経に対するデキサメサゾンの局所投与は神経内血流を減少させることが明らかになった。ステロイドを用いた神経ブロック後の神経障害の原因として、ステロイド投与後の神経内血流の減少が関与している可能性がある。
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