【目的】 平成14年度は、左右重心移動動作で下肢関節角度の違いが筋活動の協調性と運動制御にどのような変化をもたらすのか明確にすることを目的に研究を行った。 【方法】 対象は実験内容に関して説明を受け承諾した健常男性16名(年齢23.3±5.5歳)とした。計測装置はスチール製のフレームに、被験者の胸部を固定し左右へ自由に動くスライドボードと左右位置情報を検出する電気変位計が付けられた。被験者は左右の第5中足骨骨頭間隔が0.3mになるように下腿内外旋中間位で立位となった。そして、膝関節屈曲0°、30°、60°の3条件でそれぞれ30秒間の連続的な左右重心移動動作(周期2秒)を音刺激1.0Hzにあわせて左右へ最大限重心移動を行った。表面筋電図は右側の7筋(大殿筋、中殿筋、大腿筋膜張筋、内側広筋、大腿二頭筋、前脛骨筋、ヒラメ筋)から双極誘導にて導出し、変位計と筋電計の出力はサンプリング周波数1kHzにてA/D変換した。変位データから運動周期の変動係数と平均振幅を算出した。また、変位データと平滑化筋電位の散布図で協調性を検討した。加えて、課題遂行中の総体的筋活動量の指標として10周期分の全波整流の平均値を求めた。 【結果および考察】 運動周期の変動係数は膝関節屈曲0°で他2条件と比較して有意に大きかった。左右への振幅は各条件で有意な差はなかった。筋電位の平均値については、中殿筋、大腿筋膜張筋では膝関節屈曲0°で最も大きく、内側広筋、前脛骨筋、ヒラメ筋では膝関節屈曲60°で最も大きかった。左右変位データと平滑化筋電位の散布図においては、多くの筋で振幅に比例して筋活動量が増大した。膝関節屈曲0°では股関節主体の制御となり、膝関節屈曲角度が増すごとに膝と足関節周囲筋の協調性が必要となった。膝関節屈曲0°の条件下では協調する筋が少ないにも関わらず、制御の点では難しい肢位であることが示唆された。
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