平成15年度は脳卒中片麻痺患者および高齢者を対象として立位側方重心移動能力とバランスおよび歩行能力との関係についての基礎的検討をおこなった。研究は大別すると以下のとおりである。1)脳卒中片麻痺患者の立位における側方重心移動能力と歩行能力およびバランス能力との関係について、2)地域在宅高齢者における最大サイドステップ長と歩行能力との関係についての研究である。1)における測定項目は、立位(膝関節30度屈曲位)にて支持基底面を変えない条件での左右への体幹移動距離、最大サイドステップ長、片足立ち保持時間、Functional reach test (FRT)、10m歩行テストであった。結果として、体幹移動距離および最大サイドステップ長と最大歩行速度には有意な正の相関関係がみられ、特に歩幅との関係が強かった。しかし、両者とも歩行率との間には有意な相関関係はみられなかった。また、体幹移動距離および最大サイドステップ長と片足立ち保持時間との間には非線形の特異な関係がみられ、FRTとの間には有意な正の相関関係がみられた。2)における測定・調査項目は最大サイドステップ長、膝関節伸展筋力、股関節外転筋力、片足立ち保持時間、体前屈、Up&GOテスト、10m歩行テストであり、脳卒中片麻痺患者と同様に最大サイドステップ長と最大歩行速度および歩幅との間には有意な相関関係があり、歩行率との間には有意な相関関係はみられなかった。最大サイドステップ長を筋力、柔軟性(体前屈)、静的バランス能力(片足立ち保持時間)、動的バランス能力(Up&Goテスト)にて重回帰分析すると、最も寄与率の高かったのは動的バランス能力であった。以上より、立位における体幹移動距離および最大サイドステップ長の測定はバランス能力や歩行能力の評価に有効であり、さらに転倒防止のトレーニング方法としても期待できる結果となった。
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