1.【緒言】冷凍同種骨移植による感染性疾患の伝播や細菌汚染を克服する新い方法として、マイクロ波加温処理法を確立するため、(1)マイクロ波加温処理した、ウシ皮質骨の力学的強度につき検討し、また(2)マイクロ波による80℃・10分間の加温処理の殺菌効果につき検討した。2.【方法】(1)ウシ大腿骨の骨幹部中央より約80mmの皮質骨を中央より2等分し、未処理群、処理群とした。加温処理には工業用マイクロ波発生装置(Micro Denshi MOH-1500E)を用い、光ファイバー温度計(FISO OSR System)を使用し、80℃・10分間維持されたことを確認した。静的荷重試験は精密万能試験機(INSTRON 4467)を、硬度試験はビッカース微小硬さ試験機(Akashi MVK-HO)を用いた。(2)表皮ブドウ球菌、MRSA・Mu50、腸球菌γ型、黄色ブドウ球菌、大腸菌を培養し、生理食塩水(100ml)に懸濁した。試薬ビンに、サンプリングチューブ6本、温度センサ、攪拌用チューブを挿入し、サンプリングチューブの一方は外に出し、シリンジを装着した。装置内を熱風により80℃に加温しておき、懸濁液温度を80℃まで加温後、出力を手動制御にて80℃に保持した。実験開始時、懸濁液の温度が40℃、50℃、60℃、80℃、80℃・10分(加温過程)、加温処理後24時間、48時間にサンプリングし、希釈、培養、コロニー数をカウントした。3.【結果】(1)圧縮強度・最大歪・ヤング率は、未処理群と統計学的有意差を認めなかった。ビッカース硬さはマイクロ波処理群で4.1%低下したが、力学的強度に与える影響はわずかであった。(2)全ての菌において、60℃で急激に生菌数が減少し、80℃で菌は認められなかった。80℃・10分処理、加温処理後24時間、48時間にも菌が増殖することはなかった。
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