長管骨骨折の内固定方法として、髄内釘法は確立された手術手技である。しかし、従来からよく行われてきた髄内釘挿入前に骨髄内および骨皮質内側を削る操作、すなわちreamingにより骨髄内の脂肪を血中に押し出すことによる脂肪塞栓による肺障害が問題とされている(特に多発外傷例において)。このため、最近はこのような肺障害を予防するため、reamingしないで(非リーミング、unreamed intramedullary nailing)、髄内釘を挿入する手技が臨床的にはよく用いられるようになってきた。本研究の目的は、このようなnon-reaming手技が、従来のreamingする手技に比べ本当に肺障害が軽減できるのかどうかを、非骨折モデルではなく、より臨床に近く、またバイアスの少ない動物を用いた単発骨折モデルや多発骨折モデルを用いて検討し、その機序についても明らかにすることである。 大腿骨骨折および大腿骨骨折以外にも骨折がある場合の間で、肺組織障害への影響の違いがあるか否かを検討単発骨折群として一側の大腿骨骨折群(A群)に、多発骨折群として反対側の大腿骨骨折(B群)および同側下腿骨骨折(C群)をEinhorn骨折作成器を用いた骨折モデルをラットで作成(各n=20以上)する。以上、作成した各群をさらに、即時屠殺群、ギプス固定後24時間後に屠殺する群、48時間後、72時問後、1週後に屠殺する群に分け、屠殺後、肺を摘出し、肺組織中のmyeloperoxidase(MPO)活性を調べた。まだ、明らかな結果は出ていないが、現段階では、多発骨折群で肺MPO活性が高い傾向を示した。さらに、単発骨折群と多発骨折群で固定法の違いやその固定タイミングの違いによる肺障害への影響の程度やARDS、systemic inflamatory response syndrome(SIRS)との関係を検討予定である。
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