研究課題
ノシセプチンと痛覚伝導に重要なアドレナジック受容体との相関を検討する為、in vitroでノルエピネフリンの放出を指標とし、両者の関係を検討した体重250-300gの雄性Wistar系ラットから作成した大脳皮質スライス標本を用い、ノルアドレナリン神経刺激薬としてはα2アンタゴニストのヨヒンビン、ノルアドレナリン神経抑制薬としてα2アゴニストのクロニジンを加え各々、10分間37℃でインキュベーションした(各群n=6)。各試薬の投与量は10^<-8>、10^<-7>、10^<-6>、10^<-5>、10^<-4>、10^<-3>Mとした。ヨヒンビンにより大脳皮質標本からのノルアドレナリン放出は最大約160%増加し、クロニジンにより、同ノルアドレナリン放出は最大約50%減少した。このモデルを用いてヨヒンビン10^<-3>Mでインキュベーションした大脳皮質標本に10分後のノシセプチン10^<-6>Mを添加し、更に10分間37℃でインキュベーション、放出されたノルアドレナリンを定量した。その結果、ノシセプチンはノルアドレナリン量に影響しなかった。ノシセプチンのノルアドレナリン作動性神経に及ぼす影響はα2アドレナジック受容体に直接影響する以外の機序が関与することが示唆された。更に代表的な鎮痛薬であるオピオイドの神経回路と近年、鎮痛作用を有する事が報告されたオレキシン作動性神経と、ノシセプチン作動性神経との三者間の連関を、上記と同じくin vitroでノルエピネフリンの放出を指標とし検証した。上記大脳皮質スライスに様々なオピオイド、ノシセプチン作動約を添加してもオレキシンで亢進したノルアドレナリン放出は変化せず、これらの神経に明らかな連関がないことが示唆された。これらの結果、ノシセプチンはこれまでの鎮痛作用を有する神経(アドレナリン作動性、オピオイド作動性神経)とは独立して作用することを示唆しており、新たな鎮痛療法の開発の余地を示したと考えられる。
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