研究概要 |
グルタミン酸受容体作動薬の脳血管に及ぼす影響を昨年度に引き続き検討した。ハロセン麻酔下のラットを人工呼吸により二酸化炭素分圧を35〜40mmHgになるように管理し、頭部に脳軟膜血管を観察するための有窓(Cranial window)を作製した。体温は小動物用体温保持装置を用いて、直腸温が36.5〜37.5℃で保たれるように管理した。 100μMのkainateを5分間有窓内に投与を行い、連続的に脳血管径を観察した。kainateは、ラットの呼吸・循環動態に影響を及ぼさず脳血管拡張反応を示した。さらにこの拡張反応における一酸化窒素(NO)の関与を検討したところ、1mMのL-NNAの前投与によりkainateでは拡張反応に変化を認めなかった。 以上のことから昨年度の研究と合わせて、ハロセン麻酔下では、イオン型グルタミン酸受容体のそれぞれの作動薬であるNMDA,AMPAおよびkainateはいずれも脳血管拡張反応を示すことが観察された。また、同じイオン型グルタミン酸受容体の中でも、NMDA受容体の関与する血管拡張反応にはNOが関与しているが、AMPAおよびkainate受容体刺激による血管拡張反応にはNO以外のほかのメカニズムが関与していることが考えられた。 さらに全身麻酔薬としてイソフルランおよびプロポフォールを用いて、AMPA受容体作動薬の脳血管拡張反応を観察した。上記と同様の方法で100μMのAMPAを5分間有窓内に投与を行い、連続的に脳血管径を観察した。イソフルランおよびプロポフォール麻酔下では、ハロセン麻酔下と比べ有意にAMPAによる脳血管拡張反応が抑制された。 以上のことから、麻酔薬の種類によってAMPA受容体作動薬による脳血管拡張反応に差異が見られることが解った。
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