脳損傷後の2次的脳障害発生に脳脊髄液中サイトカインの関与が知られているが、脳保護作用を目的とした脳低温療法におけるサイトカインの修飾作用は不明のままである。脳内の主要な免疫担当細胞であるマイクログリアは、サイトカインや一酸化窒素(NO)等の産生を介し、細胞障害と密接に関与する。よって本年度の研究では、マイクログリアの軽度低温培養により、これらの産生がどのように影響を受けるのか調べた。 新生仔ラット(Wistar;1-2日齢)より、マイクログリアを単離し、LPS添加後、低温(33℃)、常温(37℃)、高温(39℃)下で6、24、48、72時間培養した後、培養上清中のサイトカイン(炎症性:IL-6、抗炎症性:IL-10)とNO_2^-産生量を測定した。 その結果、1)IL-6産生は、33℃では37℃に比べ6時間のみ低値となり、39℃では6-72時間抑制された。2)IL-10産生は、33℃では37℃に比べ24-72時間低値を示し、39℃では48-72時間高値を示した。3)NO_2^-産生は、33℃では37℃に比べ6-72時間低値となり、39℃では差はなかった。 以上より、1)軽度低温(33℃)下では、マイクログリアからのIL-6、IL-10およびNO産生は抑制されること、2)高温(39℃)下では、IL-10産生のみ増加することが判明した。このIL-10の温度依存性変化から、脳低温療法による脳保護作用の一機序には、マイクログリア由来の炎症性物質抑制のみでなく、抗炎症性物質の抑制も密接に関与することが示唆された。
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