研究概要 |
グリオーシスのモデルである長期培養アストロサイトと短期培養アストロサイトを比較し,長期培養に特異的に遺伝子発現が見られる遺伝子OASISを単離した。OASISはCREB familyの転写調節因子であり、中枢神経損傷部位に発現する。そこで種々の細胞マーカーと二重染色を行った結果、反応性アストロサイトに発現していることが判明した。また損傷脳で発現上昇し神経再生を阻害する細胞外基質のプロテオグリカン類と二重染色をおこなったところ、NG2、versican, brevican, phosphacanなど多くのプロテオグリカン類が時間的、空間的にOASISと共発現していることが観察された。次にOASISの標的分子をnuclear run-on assayにより検討を行った。OASISを導入させたC6細胞の核内ではコンドロイチン硫酸プロテオグリカンやヘパラン硫酸プロテオグリカンのmRNAが一様に上昇していた。さらにOASISの神経伸長に及ぼす影響を検討する目的で、OASISを強制発現したC6細胞の膜分画上で、NG108-15細胞の神経突起を伸長させた。OASIS強制発現細胞の膜分画上ではC6細胞やベクターのみを導入した細胞の膜分画上に比べて有意に神経伸長が抑制されていた。コンドロイチナーゼ処理を行った膜分画を用いて神経伸長を測定したところOASIS発現細胞の膜分画上では抑制はおこらなかった。この結果はOASISが直接或いは間接的に神経伸長阻害に働くコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの発現誘導に関わっていることを示唆している。OASISは脳損傷部位のグリオーシス組織においてプロテオグリカン類の産生を調節している可能性がある。
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