中枢神経損傷時において、周囲のグリア細胞により神経伸長に抑制的な環境を作り出していることが明らかとなっている。しかしながら、神経伸長阻害を引き起こすプロテオグリカン類などの発現に関する分子メカニズムについて詳細な研究はされていない。 我々は、グリオーシスのモデルである長期培養したアストロサイトより遺伝子OASISを同定した。OASISはCREB/ATFファミリーに属する転写調節因子であり、中枢神経損傷部位の反応性アストロサイトに発現する。また、組織学的検討により、OASISの発現部位が神経再生阻害に働くコンドロイチン硫酸プロテオグリカンと共発現していることが観察された。次にOASISの標的分子を検索したところ、OASISを強制発現させたC6細胞の核内ではコンドロイチン硫酸プロテオグリカンやヘパラン硫酸プロテオグリカンのmRNAが一様に上昇していた。さらには、OASIS強制発現C6細胞の膜分画上ではコンドロイチン硫酸プロテオグリカンによる神経突起伸長阻害が観測された。中枢神経損傷部位のグリオーシス組織においてOASISはこれらプロテオグリカン類の産生を調節している可能性がある。 また、脳損傷部位におけるヘパラン硫酸プロテオグリカンの発現が報告されていないことから組織学的検討を行ったところsyndecan familyの4種の発現を認めた。syndecan familyのいずれもが脳損傷後4日から7日目に強く発現し、同じく損傷部周囲に発現するとされる神経伸長因子のFGF2やHB-GAMなどと共発現していた。また、glypican familyのうちglypican-1も同様に脳損傷部位周囲に4日から7日目に強く発現し、軸索反発因子であるslit2と共発現していることを認めた。このように中枢神経損傷部位では神経伸長や伸長阻害など様々な役割を担っているものと考えられる。
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