難治性として知られる神経因性疼痛の発症メカニズムは不明であるが、我々は、ラットの神経因性疼痛モデルと健康ラットの膜電位の間にいくつかの相違点を見つけた。その中で、神経因性疼痛モデルの神経細胞内カルシウムは低下しており、神経因性疼痛に対して鎮痛効果の高いリドカインの作用機序は神経細胞内へカルシウムを流入させることで達成される可能性が高いことを解明した。最近の米国では新しい抗けいれん薬であるギャバペンチンが神経因性疼痛に有効であることが実験的かつ臨床的に示されており、その作用機序を、神経因性疼痛モデルに於ける感覚神経膜電位の変化を詳細に分析することで解明することが、今回の研究の目的であった。しかし、神経因性疼痛の発症メカニズムは複雑で多種の系が関与しているようであった。平成14年度に我々は神経因性疼痛患者の脳脊髄液の分析を行い、神経組織への血流低下が神経因性疼痛の発症メカニズムの一つであることを報告した。そこで平成15年度は、神経因性疼痛の代表疾患である帯状疱疹後神経痛患者を対象として、血管拡張薬から局所血流を改善させるプロスタンジンE1が統計学的に有効であることを示した。また、最近では帯状疱疹後神経痛の発生に炎症の関与が注目されているため、我々はロイコトリエン受容体拮抗作用を有するプランルカスト水和物が帯状疱疹後神経痛に有効であることを明らかにし、学会発表した。これらの結果は神経因性疹痛の発症メカニズムを解明する上で重要と考えられる。また、ギャバペンチンの作用機序を考える上でも役立っと思われる。
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