われわれはこれまでにムスカリン受容体作動薬の中枢神経系への作用として、排尿収縮力を低下させずに、膀胱部知覚を抑制する作用を見い出した。具体的には薬理学的、および分子生物学的手法を用いて、中枢神経内の排尿反射経路におけるムスカリン受容体サブタイプそれぞれの機能的役割を解明した。脳室内に各ムスカリン受容体作動薬を注入したところ、膀胱内圧曲線上有意な変化が見られ、すなわち排尿反射に有意に関与しているムスカリン受容体サブタイプが脳内で重要名役割を担っていた。また、中枢神経系で重要とされる神経伝達物質との相互作用を薬理学的に確認し、大脳皮質から仙髄までの神経経路内でのムスカリン受容体サブタイプの役割を確認した。具体的には脳室内にムスカリン受容体作動薬および相互作用を持つと考えられた各種薬剤を脳室内注入し、膀胱機能の変化を追跡した。その結果、protein kinase Cが中枢神経系における排尿反射への役割を有することが確認できた。protein kinase Cが求心路と遠心路それぞれに作用を持ち、ムスカリン受容体と密接な相互作用、こと抑制性の作用がみられた。またオピオイドの脳室内投与により、やはりムスカリン受容体作動薬の中枢神経系への作用と類似した、排尿収縮力を低下させずに、膀胱部知覚を抑制する作用を見い出した。そしてオピオイド受容体作動役が、そのサブタイプによって、それぞれ特異的な膀胱機能への影響を与えることを、膀胱内圧曲線で確認し得た。
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