研究概要 |
EPHチロシンキナーゼ受容体およびそのリガンド(ephrin)は神経系の形成や血管系の構築の制御に関与している。近年、消化器癌・肺癌・神経芽腫などの悪性腫瘍においてEph Bファミリーの発現異常が報告されているが、未だ尿路上皮腫瘍における意義は分かっていない。本研究では、Eph Bファミリーの尿路上皮癌の発生進展における関与を明らかにするために、その発現の検討を行った。まず、尿路上皮腫瘍細胞株として、7種類(DSH1,RT112,253J, T24,EJ, TCCsup,5637,Scaber)におけるEph Bファミリーの検討を行った。EphB2はほぼ全ての細胞株で発現していた。一方、EphB4は浸潤性膀胱癌由来の細胞株では高発現を示したが、表在性膀胱腫瘍細胞株DSH1では低発現であった。その他、EphB1は浸潤性膀胱癌細胞株5種のうち、3株に高発現していた。そこで、浸潤性膀胱癌細胞株全てにおいて高発現していたEphB4について膀胱腫瘍臨床検体71例を用いて発現を検討した。Real-time RT-PCR法では正常尿路上皮では低い発現を認めるのみであったが、尿路上皮癌では20例(28.1%)で高発現を示した。しかし、発現量はstageやgradeとは相関はしなかった。免疫染色法で検討したところ、EphB4は正常尿路上皮では基底層に一致して発現しており、分化するほど染色性は低下していた。また、腫瘍では、表在性腫瘍では基底層に一致して染色される腫瘍とび慢性に染色されるものとがあった。本年度はこれらの発現異常の臨床的意義を検討していくとともに、他のEphBファミリーの発現についても検討していく予定である。
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