研究概要 |
1)ヒト正常ならびに良性前立腺上皮と前立腺癌細胞におけるケモカインレセプター発現の検討 生検ならびに外科的治療にて得られた前立腺癌組織27例,正常前立腺組織8例において,抗ヒトCXCR4モノクローナル抗体を用い、ABC法による免疫組織化学染色を行いCXCR4の発現の有無と血清PSA値,臨床病期,組織学的分化度について検討した.(結果)前立腺癌組織27例中16例(59.3%)において癌細胞にCXCR4の発現が認められたが正常前立腺組織では前立腺上皮細胞にCXCR4の発現を認めなかった.CXCR4の陽性率は血清PSA,臨床病期,Gleason gradeと有意な相関は認めなかったが,血清PSA20ng/ml以上の症例において,CXCR4陽性率は骨転移と有意な相関を認めた(P=0.0361).肺転移を認めた2例は共にCXCR4強陽性であった. 2)ヒト前立腺癌細胞株ならびにヒト初代培養前立腺上皮細胞株(PrEC)でのケモカインレセプターの発現解析と機能解析 ヒト前立腺癌細胞株PC-3,DU145,LNCaP, PrECにおけるケモカインレセプターの発現解析をRT-PCR法にて行った.ファイブロネクチンコートしたポアフィルターチャンバーを用いた遊走能試験で遊走能を測定した.(結果)PC-3,DU145,LNCaPではCXCR4 mRNAの発現を認めたが,PrECでは認めなかった.PC-3,DU145ではSDF-1刺激により容量依存性に有意な遊走細胞数の増加が観察され,この反応は抗CXCR4中和抗体によってPC-3では22%抑制され,DU145では49%(P=0.0128)に抑制された. 以上より前立腺癌細胞におけるCXCR4の発現は遠隔転移の成立に関与していると考えられ,平成15年度は臨床検体数を増やすとともに,動物実験モデルでの転移巣形成とケモカインレセプター中和抗体による転移阻止実験,前立腺癌細における造骨性骨転移の機構との関連について検討する予定である.
|