(1)培養尿細管細胞における蓚酸によるCyclooxygenase-2(COX-2)の発現についての検討 方法:遠位尿細管細胞由来のMDCK細胞に蓚酸ナトリウムを添加し、経時的にCOX-2 mRNAの発現をNorthern blot法にて検討した。 結果:1.0〜1.5mMの蓚酸添加2時間後から、COX-2 mRNAの発現はコントロールに比較して約2〜5倍に亢進した。また、この現象はphospholipase A2阻害剤mepacrineにより抑制されること、およびリゾリン脂質であるphosphatidylcholineにより再現されることから、蓚酸によるCOX-2 mRNA発現にはphospholipase A2 pathwayが関与していることが明らかとなった。 (2)ラット尿路結石モデルにおけるCOX-2発現についての検討 方法:6週齢雄Sprague-DawleyラットにビタミンD3およびエチレングリコールを2週間投与することにより腎への蓚酸カルシウム結晶の沈着を惹起した(モデル1)。また、蓚酸ナトリウムを腹腔内投与することにより、2〜6時間後といった早期の影響を検討した(モデル2)。両モデルにおいて摘出した腎からmRNAを抽出しreal time PCR法によりCOX-2 mRNAの発現について、また免疫組織染色によりCOX-2蛋白の発現について検討した。 結果:モデル1においては、COX-2の発現はmRNAおよび蛋白レベルともにコントロールと同程度であった。また、モデル2においては、蓚酸投与によりラット腎におけるCOX-2発現はmRNAおよび蛋白レベルともに減弱する傾向が認められた。 以上のごとく、培養尿細管細胞と結石モデルの腎とでは相反する結果が得られた。一般的に腎におけるCOX-2の発現はレニン-アンギオテンシン系によって抑制されることが知られている。また、結石形成過程へのアンギオテンシン系の関与を示唆する転告がみられることから、本研究のラット結石モデルにおいてCOX-2の発現が抑制されたのは、レニン-アンギオテンシン系の関与によると推測される。今後、こうした点について検討を進める予定である。
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